種の会からのお知らせ

週刊メッセージ“ユナタン”24(もみの木台)

ユナタン:24≫ at もみの木台保育園

~ ヒコーキ飛ばしの不思議 ~

平成28年10月25日 片山喜章(理事長)

《せんせい、ヒコーキ、作って!》

2歳児そら組のAくんとBくんは、月齢が近く、1歳児にじ組の頃から、いっしょに遊ぶことが多い間柄でした。9月23日の事、その日は雨だったのでおやつを食べた後もそら組のお部屋で遊ぶ事になりました。何人かの子どもが小さめの“井桁ブロック”で遊んでいました。子どもたちは、それぞれブロックをつなげたり、重ねたり、並べたり、色分けして集めるなど、思い思いに遊んでいました。“井桁ブロック”は、はめ合わせるのに少し力がいるので、そら組の子どもたちの力では、はめられない時があります。そんな時は、保育者のところに「やってぇ」とお願いしに来るのでした。

担任が、何人かの子どもにお願されて、以前、作ったことのある“カニ”を作っていました。すると、そこへAくんが「先生、ヒコーキ、作って」とやってきました。

「いま、カニさん、作っているから、これが終わってからでもいい?」と答えると、「うん」と返事をしましたが、すぐに「まだ?」と声をかけてきたのです。なんとなく焦っている感じがします。「もう少しでカニさん、できるからね。その次、ヒコーキ、作るね」と返すと「うん」と応えたものの、またすぐに「まだぁ」と迫ってきました。

そんなやり取りを何度かくり返していると、突然、Aくんは「ヒコーキ、早く!」と言いながら、担任を中心に作りかけていた“カニ”をガガガーと追いやって、自分が持っているブロックを担任に手渡そうとしました。当然、“カニ”づくりのメンバーは、怒ります。一斉に「カニさん、作ってるの!」と大声で言い返して、作りかけの“カニ”を担任の方に戻しました。彼らの勢いに圧倒されたAくんは、しょんぼりした様子で、“カニ”が完成するのを端でじっと見ていました。

2歳児の子どもたちに「保育者が作ってあげる」ことは、どんな意味があるのか考えてみました。自分でイメージして、手を動かして、自分なりのものを作ることが、本来の遊びです。もちろん、みんながみんな作ってもらっているわけではありません。経験的にいえば、ほんとうにブロックを楽しみたい子どもは自分でつくろうとし、保育者とともに過ごし、関わってほしいから「ブロックを作って」という場合もあると思います。

では、Aくんの「ヒコーキ、作って」は、どんな気持ちの現れだったのでしょう。また、その時、Bくんは、何をして遊んでいたのでしょう。

《ぼく、ヒコーキ、作れるよ》

実は、そんなやり取りをしていた近くに、Bくんは居ました。Bくんも、1人でヒコーキを作っていました。そしてAくんに「ヒコーキがいいの? ヒコーキなら、ぼく(Bくん)作れるよ」と声をかけました。Aくんは嬉しそうに頷いて、ブロックを手渡しました。Bくんは、実に手際よく作りはじめ、あっという間にヒコーキを完成させて、Aくんに「どうぞ」と差し出しました。その後、自分が作りかけたヒコーキを脇において、なぜか、Aくんに作ってあげた物と同じヒコーキを新たに作りはじめたのです。

Aくんは、その様子をジッと見ていました。Bくんの作る姿に関心があったか、徐々に出来上がるヒコーキを見ていたのか、定かではありません。

《心の中でスクランブル》

ヒコーキが完成すると、AくんとBくんは、同じヒコーキを持って「ビューン!」といっしょに飛ばして遊びだしました。Aくんはヒコーキを飛ばしながら「先生、これ、Bくんがくれたの!」とうれしそうに伝えに行きました。Bくんに「おんなじだね」とヒコーキを眺めながら、話しかける場面もありました。2人が操るヒコーキは、右へ、左へ、旋回し、時には宙返りして、お部屋がうんと賑やかになりました。

この日、Aくんは、なかよしのBくんがヒコーキを作っているのを見て、自分も同じ「物(ヒコーキ)がほしい」と思って、担任の先生に作ってほしいと言いに来たように思います。一方で、担任の先生にヒコーキをつくってもらって「Bくんといっしょに遊ぼうと思った」とも思われます。また、Bくんは、どうしてAくんに「作れるよ(作ってあげようか?)」と声をかけたのでしょう。担任に再三、作って!と、おねだりし、そして待たされて、しょんぼりしたBくんを見て『作ってあげよう』と感じて「作れるよ」と声をかけたのでしょうか。そして実際に作ってあげて、さらに、Aくんにつくってあげたものと同じヒコーキを自分のために作り直しました。一体全体、どうしてなのでしょう。もし、担任の先生がヒコーキを作ってあげたなら、その後、2人は遊んでいたのでしょうか。いろいろな見方が、今もなお、旋回しています。

たった1つの短時間のエピソードなのに、実にたくさんの想像や憶測や飛び交います。同じ空間でも子どもたちが、感じ、イメージしている世界は別次元にあるようです。保育者は子どもの言動の意味を探ることが大切だと言われます(言っています)。けれども、もしかして、2歳児の子どもの心の中は、様々な気持ちや判断が縦横無尽にスクランブルしているのかもしれません。【資料提供:橋爪佳菜】