種の会からのお知らせ

週刊メッセージ“ユナタン”26(はっと)

≪ユナタン:26≫ at はっとこども園

~ クラス全体のために小グループで「対話」 ~

平成28年11月22日 片山喜章(理事長)

何事も話し合って事を決めて行動すると、決まった事に弾みがついて動きます。というか、これって、民主主義の基本のキです。しかし、保育や教育の世界では、先生1人が決めたり、教えたりし、生徒はそれに従ったり、学んだりすることが多いです。それに対して保護者の方々も日本社会自体もさほど大きな疑問も抱かずに“それでよし”という上意下達の文化が存在します。
昨今、問題になっている企業文化にも似たような因習が存在すると思われます。保育のなかで様々な事を子どもたちとともに話し合いながら決めていくことは、引いては「人権尊重」とも深くかかわっていくのだという認識が、少しずつ園文化になりつつあります。

4歳児そら組の子どもたちと「対話」にウエイトをおいて、クラス活動を子どもたちと考えることにしました。クラス全員が参加しては「対話」にはならないので、少人数で「対話」し、そこでクラス活動を決めるという方法で試してみました。異年齢のグループが4つあるので、今回、まずは、そのなかの“るんるんグループ”の7人が企画メンバーになりました。

1回目の話し合いでは「クラスみんなでこんな遊びをしたら楽しいってものを考えてみよ」と投げかけると「スライムはどうかな」「散歩に行きたい」と自分がしたいことを思い思いに発言しはじめました。その後、「スライムはもういっぱいしたし、おもしろくないと思うから違うものしたいな」とさっきの提案に反対する意見が出ました。一瞬、場がシーンとなりました。
そんなときは先生に助け(依存)を求めがちになります。「先生、こんなんはどう?」「先生、これしたいんやけど」と‥‥。しかし、担任は子どもの言った事をメモ書きして、忙しさを装うと、気持ちが吹っ切れたのか、「じゃ~何するー?」「何したらみんな喜ぶやろな~」と子どもどうし“たいわ”がはじまりました。保育室を見渡す子ども、すぐ横にあった《かがくであそぼう》の図鑑を取り出して、「ここに、みんなが楽しめそうなんあるかも」とページをめくると7人が一斉に肩を寄せ合って眺めて‥‥「これはおもしろくないな」「これは役にたたんな」「これ外でできるよ」「でも部屋の中のほうがいいやん」とたくさんの会話が飛び交いました。

自分がしたい遊びを考える気持ち、クラスの友達がして楽しめそうな遊びを思い描く姿、そして何よりも、この7人で「大事な事」を決めるために話し合っているのだという自己有能感。
この3種が入り混じった心的状況のなかで、少し神妙な言い方で「ちょっと先生、この説明、読んで」と担任に尋ねました。その説明を読みあげると「よし、これがいい」「これがいい」と全員が納得して決めた遊びが「空気を押してみよう」という浮沈子(ふちんし)を利用した科学実験のような活動でした。けれども、それをするには、たくさんの準備物がいります。しかも、クラス26人全体でとなると、26セットは必要になります。さてさて、どうするのやら…。
用意する物は“ペットボトル”“魚型のしょうゆ入れ”、そして“ナット”です。「僕はペットボトル集める」「ジュースとかいっぱい買ってもらうわ」「私は魚のしょうゆ入れ、お母さんに聞いてみる」とすぐに手に入るものはよかったのですが、「“ナット”は?・・・」と担任の方を見つめる子どもたちです。子どもたちの熱いまなざしに押されて担任は「じゃ~せんせい、買ってくるね」と応えると、子どもたちの顔つきは緩んで、意欲が満ちてきました。

「でも、るんるん(グループ)だけで集めるのも難しいから、みんなにも伝えて協力してもらおう」と一人の男の子の意見で、クラスお集まりで「こんな遊びをするから、こんなものが必要なので協力してほしい」と自分たちで伝えました。ここで一旦、「対話」は終わりました。
数日後、「お友達の分も持ってきたで」といくつかまとめてお家から物を持参してくる子もいて準備は整いました。るんるんグループの子どもたちは、「これで、自分たちで決めた遊びができる」、とまさにルンルン気分で、そして先生気取りで、当日を迎えることになりました。

当日は、活動前にるんるんグループで、机の準備をして、手順や役割について打ち合わせをしました(一度、自分たちだけで作って試していたのです)。「だれがしゃべる?」「だれが図鑑を持つ?」「ちょっと恥ずかしいな」「みんな聞いてくれるかな」と普段あまり見せない、緊張した様子の子どもたちでした。全員集合し、活動が始まると、堂々と、しっかり遊びの説明をしている子どもたちに、始める前は少し不安だった担任も、この姿に驚くほど感心しました。クラス全体が、彼らが提案し、伝授した活動に満足した様子で活動を終えることができました。

その日の夕方、るんるんグループだけで振り返りを行ないました。「対話」し「実践」した後には必ず「振り返り」をする、というのは、子どもの活動においても「園文化」になっています。
実際にやってみると「失敗するお友達に、違うよって教えてあげた」「困っているお友達にやり方教えてあげた」「みんなが、これどうするの?って、言ってきてくれて(頼ってくれて)嬉しかった」と、良い表情で「対話(感想の交換)」がなされました。「机の準備とか最後片づけるのもしんどかったな~」と愚痴る言葉にも達成感が詰まっていました。

何事も話し合いをし、対話をしてすすめる、という事の大事さは理解できても、実践するのは難しい現実があります。なぜなら、私たち保育者(教師)は、無自覚にあたえられたクラス集団、ここでは4歳児そら組という単位で事をすすめようとする習性が身についています。小学校でも然りです。この発想から抜け出さない限り、教育・保育に未来はないとさえ言えます。

今回のように7人の子どもが「対話」によって考えた活動を手分けしてクラス集団に伝える、つまり、子どもが子どもに教える一種の対話形式の教育方法が教育界全体の主流にならなければ、教育が他児との競争に終始してしまう危険性が一層、膨らみます。能力格差が優越感と劣等感を生み出す現況を打破するためにも学び合う集団づくりが大切です  【資料提供:定久恵美】