種の会からのお知らせ

週刊メッセージ“ユナタン”24(なな)

ユナタン:24≫ at ななこども園

~ いろんな気持ちをはめこんで ~

平成28年10月24日 片山喜章(理事長)

〈実はスゴイ、子どもの能力〉

4月当初から、2歳児うめ組の子どもたちは、コーナーあそびなどでよく“パズル”をしていました。登園してすぐ「パズルしていい?」というほどパズルに夢中です。

そこで新たにパズルを購入しました。真新しい“パズル”を見た子どもたちの目は、キラキラ輝いていましたが、購入したパズルの中にはレベルの高い物もありました。

「これする!」と喜び勇んで遊びだしたものの、難しくて「できない~」と途中で投げ出したり「せんせーやって~」と助けを求めてくる場面もありました。

先生たちも「難しいなぁ~」「こっちかな~?」などと話しかけながら、子どもと一緒に完成させていました(60ピースの物は本当に難しくて、2歳児向けではなかったかなと後悔しかけていました)。ところが! 子どもたちは来る日も、来る日も、その難しいパズルに挑戦します。「できない~」「てつだってー」と毎日、毎日、挑戦しているうちに、とうとう! 一人、そして二人・・・と完成させる子が出てきたのでした。

おそらく子どもの目に映る“パズル”の形は、大人が感じる形と異なるのでしょう。さらに、先生が完成させるに至った過程を凝視できているのでしょう。この2歳児の子どもたちの能力の高さについて、大人社会はどれほど認識できているか、気になるところです。「発達」「成長」の概念の見直しが必要だと感じました。

〈やっぱり、すごい、保育の力〉

ある日、「むずかしい!」「できない~」の声が聞こえてくると、出来るようになった子どもたちが“出番!”と言わんばかりに「てつだったろうかー」と集まってきました。手伝うつもりが途中から自分が夢中になり、自分で仕上げてしまったり…、大勢が集まって来てくると、最後のピースを自分がしたくて両手に隠し持ち、周りの様子を見ながらピースを小出しにするので、なかなか仕上がらなかったりすることもありました。

そして、時には手が出てしまいトラブルになることもありました。その都度、その都度、子どもの気持ちを聞き、お互いの気持ちを伝え、どうすればよかったのか、子どもたちと一緒に考えるようにしてきました。「手伝う」と言いながら自分が完成させた子も、難しいと困っている子に「ここやで!」と言葉で場所を教えてあげ、本人が出来るようにお手伝いする姿に変わっていきました。これこそ「ななの保育」の真骨頂です。

〈運動会では?!〉

運動会競技は、ご覧いただいたように、“パズル好き”な子どもたちに合わせて『2人でパズル』(大きめの箱3段を積み上げる絵合わせ種目)をしました。誰と2人組になるのかは子どもたちで決めます。運動会の予行ではこんなエピソードがありました。

普段、Aちゃんは参加したりしなかったり、自分から率先して相手をみつけて取り組むことはあまりなかったのですが、この日は早いうちにBちゃんとペアになりました。二巡目にスタート。Aちゃんは3段全て運びたいようでしたがそうはいかず、一方、Bちゃんはすばやく1つ運んでいきます。Aちゃんは残りの2つを運び、2人で積み重ねていくのですが、絵柄が揃わず、なかなか完成しません。「こうかな~?」と言いながら積み替えていきますが、一向にかみ合わず……、とうとう、Aちゃんは「きらい」とボソッと言って待機マットの方へ歩いて行ってしまいました。

なかなか思い通りにならない事が“きらい”という表現になってしまったのでしょう。それでも、Bちゃんは一人で頑張っています。一人で組み替えていくけれど、絵柄は揃わず、悩んでいる様子です。“どうするのかなぁ~”と見守っていると、1巡目に終えたC君が「Bちゃんこうやで!」とごく自然な形で手伝いに来ました。BちゃんはC君のアドバイスで組み替えると、1段目と2段目がうまく出来上がりました。“パズル”同様困っていると手伝う子が見られ、2人の気持ちと気持ちがピタッとはまった感じです。

〈運動会でも!?〉

Bちゃんが一人でしている間「Aちゃんしないの? Bちゃん、一人でしてるけど、行かなくていいの?」と保育者は声を掛けていました。Aちゃんは「うん…‥」とうなずき、マットの周りでウロウロし、チラチラとBちゃんの様子を見ていました。どうやら、Bちゃんの様子が気になっているようです。

“さあ、あと1段”という所で、待機マットの方で様子を見ていたAちゃんが足早に戻って来ました。そして「Aちゃんがぁ~~~!!」と言うや否や、3段目を取って、乗せて完成させました。完成すると2人は「できた~!!」と喜んでいました。

事後、Aちゃんは、その場から離れて様子を見ていたけれど、もうすぐできると分かたので、戻ってきたのかどうか、話題になりました。私はそうだと思います。

“パズル”をした時、出来るようになった子が“出番!”と言わんばかりに「てつだったろうかー」と集まってきたように、最後のピースを自分がしたくて隠し持ち、周りの様子を見ながら小出しにした子のように、Aちゃんは、様子を伺い、きっと、自分でできると判断した時点で駆け寄ったのでしょう。 【資料提供:山本美千代☆寺田皆美】