種の会からのお知らせ

週刊メッセージ“ユナタン”24(池田すみれ)

ユナタン:24≫ at 池田すみれこども園

~ あらためて、異年齢、異月齢ゆえに育つもの ~

平成28年10月24日 片山喜章(理事長)

【乳児も異年齢タイム、はじめています】

幼児クラスと同じように、乳児クラスにおいても、クラスを越えた遊び(学び)の場面を6月から設けています。1歳児赤組と2歳児桃組の2つの部屋をオープンにして、「静」と「動」の遊び環境に分けて、それぞれに数多くのコーナーを設けました。

そこで、子ども自身が持ち前の探索欲求を発揮し「ここで、こんなふうに遊びたい」と自分で遊びを選んで遊ぶ力を育もうと画したのでした。

そんな取り組みを“ハッピーデー”と名付けて毎週金曜日に行っています。

“ハッピーデー”の開始前、一同に子どもたちが集まって「レッツ ハッピー!」とかけ声を発することにしました。明らかに“やらせ”ですが、1,2歳の子どもでも、このかけ声が、はじまりの合図であることを理解して、スイッチが入ります。

【「静」と「動」のメリハリのある環境づくり】

2つのお部屋のうち、赤組の部屋は「動」と位置づけ、粗大遊びコーナー、ブロックコーナーと季節にあった遊びとして夏は魚釣りコーナーを設けていました。「動」の部屋をつくることによって、子どもたちは、思いっきり体を動かして遊ぶことができます。

桃組の部屋は、おままごとコーナー、小麦粉粘土コーナー、絵本コーナー、パズルなどの机上遊びコーナーを設けて、ほっこりと落ち着いて遊びに集中できる「静」の環境づくりをしています。「静」の部屋をつくることによって、周りに走り回る子がいないので注意がそちらに奪われることがなく、同じコーナーで集中して遊ぶ姿が見られます。

赤組の子どもたちは、ふだん桃組の部屋を使わないのでお部屋自体に興味を示して、桃組の部屋に集中し、逆に桃組の子たちは、赤組の部屋に集中して遊ぼうとしました。ですから当初、あまり赤組の子どもと桃組の子どもが交わる姿は見られませんでした。

回数を重ねても、同じコーナーで遊んでいる子が多いので、保育者たちは「赤組さんのお部屋には○○があって、桃組さんのお部屋には○○があるよ!」と“ハッピーデー”を始める前に子どもたちに声掛けしました。すると「わたし、これ、する」と言ったり「こむぎこ、ねんど、あった」と知らせてくれたり、どこで遊ぼうか、と迷っていた子どもたちも、徐々に遊びを選ぼうと部屋全体に関心を持って動くようになりました。

【コンコンからクルクルーへ】

ある日、「静」の机上コーナーで2歳児桃組のAちゃんが絵を描いていました。集中して何枚も何枚も描いていました。すると“コン、コン、コン”という音が聞こえます。Aちゃんの横で1歳児赤組のBちゃんがクレヨンを叩く音です。まだ手指を動かして、描くことはむずかしいようで、クレヨンを叩いて、微かにできる色の点々に目をやり、コンコンと響く音に耳を傾けていました。

Bちゃんが、クレヨンを叩く音は一向に止まりません。Aちゃんは気にしています。集中力が途切れそうになっているのが、表情から伺えます。とうとう、がまんできずにAちゃんは、Bちゃんの方に近寄って行きました。さて、さて、どうなるやら‥‥。

「クルクルー」「クルクルー」とAちゃんの声。叩く音は止まりました。Aちゃんは、Bちゃんにお手本を示していました。くるくるとなぐり描きしてみせたのでした。Bちゃんは、それをじっと見て、「クルクルー」と同じように声をだして、Aちゃんと同じようになぐり描きをしだしたのです。

【年齢差、月齢差が引き出すいたわりの気持ち】

このような姿は、Aちゃんに限ったことではありません。桃組の子が赤組の子に「はいどうぞ」と玩具を渡してあげている姿や、赤組の子が桃組の子が遊ぶ姿を見て真似て、遊び方を会得する姿はよく見られます。この異年齢交流の“ハッピーデー”を通して、赤組の子にていねいに接して、一緒に遊ぶ姿はよく見られ、泣いている赤組の子の頭を桃組の子が“よしよし”してあげている姿も見られます。

これは、ただ単純に“やさしさ”とか“思いやり”が育っている、と言うわけではありません。自分ができる事は、できない子に教えたくなり、自分がしてほしいことは、逆にしてあげたくなる場合もあります。ですから“パッピーデー”でなくても、ふだんの生活の中でもそんな姿は見られます。けれども、“パッピーデー”は、先生が選んだ活動を子どもに投げかける画一型の保育ではありません。そこに大きな意味があります。

自分で遊びを探して、選べる環境は、先生からあたえられて集中を強いられる活動とは全く異なります。また、異年齢、異月齢だからこそ、子どもどうしが互いに学び合う能力は、高くなり、発達の違いを感じ合うからこそ“やさしさ”や“ていねいさ”がその子の心の内から、引き出されるのだと思います。今、赤組の子もしてもらったことを来年、桃組になって、赤組の子に自然に接するでしょう。乳幼児期にこのような環境でこのような経験をすることに値打ちがあるのです。【資料提供:三宅美佳子】