週刊メッセージ“ユナタン”26(なかはら)
≪ユナタン:26≫ at なかはらこども園
~ 卒園児とトライやるウィークの中学生と在園児 ~
平成28年11月24日 片山喜章(理事長)
卒園した子どもたちは、ピカピカの1年生の4月、ご自慢のランドセルを背負って、毎日のように園にやってきます。卒園後、わずか数日しか経っていないのに大きくなったように感じてしまいます。その後は何か用事があったり、頼まれごとがあったり、そして、時々、思い出したように園を尋ねてくる子がいます。
先日のことです。卒園して2年が過ぎて小学3年生の女の子が3名、園にやってきました。ちょうど同園会の案内のハガキを送った直後だったので、きっと、遊びがてらに連れだってハガキを持ってきたのだろうと思いましたが、そうではありませんでした。
そのなかのAちゃんが、在園中、ある保育者がお気に入りだった「マトリョーシカ(ロシアの人形)」のことを思いだして、「今、通っている“工作教室”で作ったの」とわざわざ贈り物として園に持ってきてくれたのです。
このAちゃん、在園していた時は、なかなか自分を出しきれず友達との関係にも苦労していました。けれども、卒園後は、何度か忘れた頃に来ては自分の近況を語って帰っていました。学校のことや習い事のこと、家族のことなど話題は様々です。
このような姿にふれる時、私たちは考えてしまいます。「おとなしくしていること」、「控えめであること」を、自分を出せていないと捉える“見た目主義”の捉え方や評価の仕方を見直さないといけないと思います(ご家庭においてでもです)。
Aちゃんも在園児時代、いろんな事を感じ考えて、いろんなことを吸収していた。しかし、感じ考えた事を即時に表現はできなかった。卒園して、時を経て、少しずつ表現する力を得るに至った。「感じ考えた事」と「表現する」の間には、その子特有の「時間差」があることを心がけて、こども園時代の教育・保育の任にあたりたいと思います。
Aちゃんは、“贈り物”を渡した後、2階に上がりたいというので案内しました。
2階には、たまたま卒園して、“トライやるウィーク”で来ている中学2年生の女の子が3名、いました。そして、ばったり出会いました。
とても奇妙な、不思議な空気が流れ、時間が後戻りしているような感じがしました。Aちゃんたち3人…「あの人たちなにしてるの?」と不思議そうに尋ねました。保育者…「トライやるウィーク、っていって中学生のお兄さんお姉さんが大人になったらどんなお仕事をするのか、ほんとうにやってみて、考えて、お仕事を考えているの。このお姉ちゃんたちは、なかはらこども園の先生たちのお仕事を勉強しにきてるのよ」と、話していると、彼女たちは、親しげに近寄ってきました。
よく考えると、この中学生たちが、5歳児ぞう組の時にAちゃんたちは0歳児だっのです。中学生たちは、なんと、Aちゃんたちを覚えていました。8年前なのに。彼女たちは毎日まいにち夕方になると、Aちゃんたちのいる0歳児のお部屋に来て、おやつ
を食べさせたり、遊んだりと、お当番活動をしていたからです。このお当番活動は、毎年続けられていました。3.4.5歳児の異年齢の生活や活動とは異なる格別の経験をしていたのです。時を経て、クラス活動のことは、忘れてしまっても、毎日のように、赤ちゃんを世話したことは、やわらかな記憶として留まるのだと考えさせられました。Aちゃんもぞう組の時、このやわらかな経験をしています。自分を出せないように見えていても、お世話をして入れる時は、黙々と経験していました。そんな経験の数々が、彼女を「工作教室」に通わせ、そして、わざわざ作品を持参して来園するという判断に至らしめたのは興味深いです。0歳児から5歳児まで生活し、子どもどうし、お互いの成長に影響をあたえあうこの「こども園」の強みをあらためて認識させられました。
…懐かしいね。Aちゃんたちも中学生になったらこうやって、なかはらこども園にお勉強にくるかもしれないね…などと話をしていると、そこに現在5歳児のぞう組のこどもたちもやってきて話に加わりました。Aちゃんたちは、見覚えのある子たちです。
「中学2年生」と「小学3年生」の関係を説明すると、一人の5歳児が「じゃあ、○○も中学校に行ったらここに来るん?」というので「○○ちゃんが中学生になった時に
なかはらこども園に来たいって思ったら、来れるかもしれないね」と話は弾みました。
このこども園が在園児だけではなく、卒園後も集える場、小学校を卒業してからも関われる場であることを、このわずか数時間で、実感することができました。これからは地域の子育て拠点となる、と気負わないで、せめて、卒園した個々の子どもの育ちを支えるようなプランを練っていこうと画している最中です。 【資料提供:佐々井 智恵】