週刊メッセージ

週刊メッセージ“ユナタン”28(もみの木台)

2017年1月6日 金曜日

ユナタン:28≫ at もみの木台保育園

任務遂行で自己抑制!?

平成28年12月22日   理事長 片山喜章

2歳児クラスは、満三歳を迎える時期ですから自我の芽生えが強くなる頃です。園生活においても子どもどうしのトラブルが多くなります。自我を出し合って子どもどうしがぶつかり合う姿は自然な事ですが、同時に自我を抑制することも保育(発達)として大切なテーマになります。いわゆる我慢する態度のことです。我慢する力(抑制機能)を育むには、保育園では、興味・関心をそそるような遊び環境を整えて自分の好きな遊びを選んで没頭したり、簡単なルールのある活動(ふれあい遊びなど)を通して、仲間と折り合いをつける経験を重ねることだと解しています。

2歳児そら組の子どもたちも、友達とよく遊んでいる時ほど、思い通りにならない時には、手が出たり、つかみ合いになったり、その度、保育者が、お互いの気持ちを確かめ合うために中に入って話をしています。やって良い事、悪い事を伝えるのではなくて、(そんなことは百も承知しています)、互いの気持ちを聞いてあげることが自己抑制力を高めるポイントです。Aくんも、普段、自分の思いが通らない時には、友達とぶつかってしまうことが多い子です。

その日は土曜日でした。土曜日は、0歳児から5歳児まで20人くらいがいっしょに過ごす特別な日です。Aくんが園庭遊びをしている時、4歳児ほし組と3歳児つき組の4人くらいの男の子がヒーローごっこをしていました。各々が自分の好きなキャラクターになって変身ポーズをしたり、魔法の言葉を唱えたり、仮想の敵と戦う真似をして走り回っていました。仮面ライダー、ゴレンジャー、ウルトラマン、月光仮面など、ヒーローごっこの愉しさは昔も今も変わりはありません。ヒーローに成り切ることで、自分の有能性を自分で表現したり、正義感を発揮したり、一見、乱暴そうに見えるこの遊びには、子どもが健全に育つうえで、大切な要素が含まれていると理解できます。

この日、普段、いっしょに遊ぶメンバーではなかったので、自分のキャラクターを相手に説明したり、場面の設定をみんなで相談しながら遊びを続けていました。Aくんは、その様子を近くでじっと見ていました。あまり楽しそうなので思わず、彼らの後ろについて走り出しました。ヒーローたちも特にAくんのことを嫌がることもなく、仲間に入ることを認めていました。けれども、所詮、いっしょに遊ぶ楽しさのレベルが異なります。Aくんが嬉しそうな表情でヒーローになりきってみせても“志向”が違うために、ひとり浮いた感じで、物語もチグハグになっていきました。

それでもAくんは、ひとりでポーズをとって愉快にくるくる走りまわって参加しているように見えました。けれども、お兄ちゃんたちにとっては、だんだん疎ましい存在になっていったのです…。

すると、その時、4歳児ほし組のBくんがAくんのところに駆け寄って、そして言いました。

「ちょっといい?」とふつうに話しかけた後、急に「いいか、おまえは、ここをしっかり守っているんだよ!」と隊長口調で話しだし、近くにあったフープの中にシャベルを3本入れて、「これを守るんだ!」とAくんに任務を伝えました。任務を託されたAくんは、力強くうなずきました。そしてAくん以外の子どもたちは、颯爽とその場を立ち去っていったのです。

その後、3分くらい、周りに誰もいない状態が続きました。それでもAくんは、その場所を離れないで真剣な目つきでシャベルを守り続ける任務を果たし続けました。このとき、ヒーローたちの戦いの場所は、別のところに移動していたのです。きっと、Aくんの心の中では、(憧れの)お兄ちゃんたちに託されている、という使命感がはたらいていたのだと思います。動き回りたい2歳児本来の欲求をAくん自身が主体的に抑えて、その場を動かず我慢しているように見えます。この状態をAくんに脳科学的な意味での抑制機能(教育効果)がはたらいていると、私は捉えるのです。

それからしばらくして、Aくんは自分なりに“任務”を果たし終えたと考えたのでしょう、ごく自然に砂場の方に行って、違う遊びをしはじめたのでした。普段のAくんは、同じクラスの子と“戦いごっこモドキ”の遊びをするとき、必ず、戦う主役になって、時には乱暴に振る舞うこともありました。しかし、この日はBくんに言われたこと(指令)を理解し、忠実に役になりきることを楽しんでいるように感じました。まさに、異年齢保育が織りなす姿で、年上の子たちとの遊びにうまくはまった満足感がAくんの表情から伺い知ることができました。

一方、Bくんは、普段、自分の主張を強い言葉で表現する子です。相手に疎まれたり、反発されてしまうことがよくあります。そこにいた保育者の目には、当初、Aくんの動きがジャマだなと感じながら許容したものの、ほんとうに遊びの邪魔になってきたので、彼なり考えてAくんに言葉をかけたように映りました。しかし、クラスの友達に接する時のように、ストレートに「ジャマ!」と言うのをためらったように思います。そこで年下のAくんを傷つけないように考えた末、この“任務”を授けたのだと思われます。Bくんもまた彼なりに抑制機能をはたらかせたのだと考えられます。

日常的な異年齢での生活は、3歳児~5歳児です。しかし土曜日の少人数の中では0歳児から5歳児までの異年齢保育になります。そのような状況(0歳~5歳までの少人数の異年齢保育)がもたらした成果であると言えますが、普段、4歳児ほし組の生活で友達とぶつかって、嫌な思いをしたり、辛酸をなめたりした経験がもたらした結果であるとも考えることができます。その現場に居た2歳児そら組の担任は言います。「2歳児同士だったら、もめてしまうような遊びが子ども同士でうまく話を進めていったところがとても印象に残った」と。【資料提供:野志美由紀】

週刊メッセージ“ユナタン”28(世田谷はっと)

2017年1月6日 金曜日

 ≪ユナタン:28≫ at 世田谷はっと保育園

おひさまきらきら物語

平成28年12日22日  理事長 片山喜章

〔どこから持ってきたの?〕

おひさま組、1歳児のある朝のことです。おままごとコーナーでマツコとウメコが一緒に遊んでいました。担任もそこにいました。そこに割り込むようにモモコがやってきて、「これ読んで」と一冊の本を持って来ました。それは、保育室を出た先のエントランスの隅の《くつろぎ絵本コーナー》に置いてある「写真本」でした。(どうして、この本をここまでもってきたのだろう?)担任は、不可思議に感じつつ、モモコに「この本なら絵本コーナーに行って読もうか!」と声を掛けました。

が、モモコは「やだ、ここがいい」と言うので、おままごとコーナーの横で読むことにしたのです。

その本は4、5歳の男の子が好みそうな『カイコ(幼虫~サナギ~成虫)』の本でした。カイコの成長過程が写真になっているもので、読んであげるというより、リアルな写真を見て、あれこれ想像をめぐらすのに適した本でした。担任の横に座ると、モモコは、自分でページをめくりだし、まるで、この本のおもしろさを担任に知らせたがっているようでした。

 

〔食べさせてあげる〕

モモコは 「ごはん食べたら大きくなるんだよ」と虫の成長が描かれていることを理解しているようで、ページをめくるたびに 「ほら、(はらペコ)あおむしみたい」と担任に話をはじめました。

すると横で聞いていたマツコが、なぜか、おままごとで作ったごはんを持ってきて、器からスプーンですくって「はい、食べて~」と器用に写真の幼虫にご飯をあげ始めました。もう1人のウメコも同じように、「ウメコのも食べてね」と写真の中の虫にご飯を食べさせようとしました。モモコは、食べさせることはなく、ただページをめくり、「ほら、もっと大きくなったよ」 と成長した姿(写真)を語って、話をすすめます。あきらかに科学系の写真本に、1歳児の子どもが興味を抱き、「観察」を楽しむような「ごっこ遊び」をするような、摩訶不思議な時空のなかに誘い込まれた感じです。

 

〔食べちゃ、ダメ!〕

モモコがページをめくり、マツコとウメコがご飯を食べさせている時、ジョンが登園してきました。そこに担任がいたからなのか、3人の女の子が何だか楽しそうにしていたからなのか、ジョンもすぐさまかけよって、仲間に入りました。早速、参加です。いつも手にしているお気に入りのスプーンを持って座りました。が、器は持っておらず、2人が食べさせている(お世話している)姿を、じっと見ていました。すると突然、それまでご飯を「食べて~」と言っていたマツコが 「食べちゃおう」と虫を食べる動作をし、ウメコも同じように 「食べちゃおう」 と食べるマネをしはじめたのです!

モモコは二人の様子をじっと見ていましたが、二人の振る舞いを静観していました。ところが、(正義感の強い)ジョンは「食べちゃダメだ~」と声を荒げました。その後も、マツコとウメコは、まるでジョンをからかうように「食べちゃおう」と言い、ジョンは「ダメだよ」と必死に言い返し、2人はジョンとの掛け合いを楽しんでいるようにも見えました。「ダメヨ」「ダメ」「ダメ」とジョンが言っても、2人がしつこく 「食べちゃおう」をくりかえすので、ジョンはとうとう腹を立て、我慢出来ずに、ウメコを叩き、そして言い合いになりました。ウメコはギャーと大泣きしますが、それでも尚、「食べる!」と言い張ります。ジョンは「ダメなの!」とそのページを押さえて必死に守ろうとします。

善と悪のカテゴリーを飛び越えた葛藤劇あるいは対決シーンです。

そこで、とうとう担任が仲裁に入りました。「食べられちゃったら可哀想なんよだね」とジョンに言葉を添えてあげると「うん」と言って、押さえていた手を戻しました。ウメコの方もいつもなら泣き出すとしばらく引きずるのですが、その場ではすぐに泣き止みました。自分も本の中の虫のお世話をしていたせいか、食べるという自分の行いが自分の本意でなかったからか、よくわかりません。

そして、泣き止んだウメコは、再び、成長してきた虫(写真)にご飯を食べさせはじめました‥。

一方、モモコは、冷静にページをめくり、最終ページにたどり着き、 「わ~、ちょうちょ(カイコ)になったよ」と、嬉しそうにお話を終了させたのです。そろそろおかたづけの時間です。4人は落ち着いて、その場を離れ、おかたづけの時間を迎えたのでした。

この物語から食べる事と食べさせる事は表裏だと感じました。もし、これが林檎なら、ごっこ風にみんなで食べて“ああ、おいしかった”と楽しめますが、2人がお世話して、ごはんをごっこ風に食べさせてきた生き物を逆に食べようとするのは、不思議です。その姿に怒るジョンの感性は、とても素敵だと思います。ウメコとマツコの心の中に分け入ってみました。きっと愛しさを感じるから食べさせてあげた(お世話した)のでしょう。逆にお世話をしたことで、愛おしさが募り、愛おしさ故に、我が物にしようと気持ちが動いて、食べるという行為で表現したのでしょう。

まさに人間の本質(豊かさ)を垣間見た感じです。しかし、もしも、ジョンが最初から食べさせる仲間の内にいたなら、どう振る舞ったでしょう? 食べる仲間になったかもしれません。もしも、ウメコが、後からやって来て、お世話をしないで、友達が食べさせる姿を眺めるだけで、仮に、ジョンが食べようとしたなら、「ダメ!」と怒りを感じたかもしれません。1歳児の世界は、何とデリケートなのでしょう!というよりも、この子たち自身の感性(知性と情緒)は、何と、豊かなのでしょう?

このような姿を引き出した。この保育園の環境と先生たちは、何と、すば〇〇いのでしょう?

食べさせる事も食べる事もしなかったモモコって? 彼女は、どうして『カイコ』の本をわざわざ持ってきたのでしょう。様々な仮説が味わい深く広がります。    (資料提供:関戸真理子)

週刊メッセージ“ユナタン”28(はっと)

2017年1月6日 金曜日

≪ユナタン:28≫ at はっとこども園
2歳児&5歳児「交流の日」の教育効果

平成28年12月26日   理事長 片山喜章

今年度、4月より毎週木曜日に、5歳児かもめ組と2歳児なぎさ組が交流を行なっています。きっかけは、2月の発表会の後からはじまる移行期保育で見られる2歳~5歳が交わる豊かな姿でした。ならば、4月から1年を通して定期的に行なうと、子どもたちはどんな姿になるだろう、と楽しみだったからです。夏頃まで、定番活動としてリトミック、二人組を組み合わせた「ふれあいあそび」をメインに行ないました。

4月、初めての「交流の日」、半数以上の2歳児は、物怖じし、先生にしがみつく子や隅っこで固まってしまう子もいました。「一緒にしよう」と、とびっきりの笑顔で誘いに行っても「いや!」と断わられ、かもめ組の子どもたちは、たいそうへこみ気味でした。そんな子どもたちの姿を見て、逆に「これからどんな風に変わっていくのだろう」と期待を膨らませる担任4人でした。 「交流の日」を重ねると互いに名前もしっかり覚え「一緒にしよう」から「○○くん、しよう」と名前を呼んで誘うようになり、交流会らしい雰囲気になりました。
30分間ほどの活動の中で微笑ましく手をつないだり、触れ合ったりしながら、徐々に、なぎさ組も楽しく参加し、かもめ組も得意気な表情を見せるようになってきました。

【2歳児a君の変化】
交流を重ねると、夕方、2歳児のお部屋に遊びに行きたいというかもめ組の子が増えてきました。かもめ組の子どもたちは、「交流の日」が始まる前になると 「今日は○○ちゃんと遊ぼうっと」など期待を込めて待つようになりました。活動内容を基本的に毎回、同じ内容にしていたために、かもめ組の子どもたちは見通しを持って、なぎさ組の子を支えることができます。優しく話しかけたり、ちから加減を考えたり、クラス活動では見られない姿が引き出されました(スゴイ!)。ある日、2人組の活動で、手をつながずに隅っこにいたなぎさ組のa君に対して、担任が手を引くと、その手を振りほどいて嫌がりました。しばらく観察していると、5歳児のBちゃん、Cちゃんが、a君を気にかけながら、楽しそうに遊んで見せたのでした。特に誘い込もうとはせずに、楽しそうにやって見せてくれる姿に、a君は、この2人の姿に見入っていました。

a君は、「交流の日」と聞くと顔が引きつるほどドキドキしていたようだった。「交流の日」は決まって隅っこでジッとみんなの様子を見て、5歳児が「aくん!」と誘いに来ると目をそらし、先生にしがみつき目に涙をためることが続きました。「交流の日」が終わったある日、5歳児が話し合っていました。
D「a君いっつもしてくれへんよな?」 E「誘ったら泣いちゃった」 F「よし!誰がa君と一番仲良くなれるか勝負しよう!」。そんな男児の会話を耳にしました。
その次の「交流の日」では、タイミングを見図り、そっと、近づいてみたり、a君の好きなものをリサーチしたり、嫌がるa君の近くであえて楽しそうに二人組遊びをして見せたり、と、5歳児の中で誰がa君の心をつかめるか、あの手,この手と試すことをクラスの子の何人かが楽しんでいるように見えました。
8月の「交流の日」は、フープを使った電車遊びをしました。毎回のように「a君!電車に乗る?」と声をかけるF君に対して、この日は少し考えてから、コクンとうなずいてフープの電車に乗ってくれました。
F君は、普段より慎重に運転手さんを務め、お客さんの満足度をあげていたようです。「すごい!a君が一緒に遊んでる」と.なぎさ組の担任は驚いて喜んでいると、他のかもめ組の子どもたちも同じように驚いたようです。a君の表情も少し和らぎ、この「電車」がきっかけで、大きく前進したのでした。なぎさ組が帰った後、「F君!すごいやん! a君、電車に乗ってたな」とクラスで大絶賛されたF君でした。

9月のお散歩の時も、F君は、「一緒に手をつなごう」と誘い、公園まで一緒に歩きました。表情は、ニコニコです。その日を境にお兄ちゃん好きになったa君は、他のかもめ組のお兄ちゃんとも園庭やお部屋でよく遊び、時には上手に甘えるようにもなりました。2歳児の子どもにとって、3つも年上のお兄ちゃんは怖い存在でもあります。けれども5歳児なりに、a君を気づかい、受容し、うまく誘いこんだことで、a君は心を開き5歳児の子どもたちは、a君とかかわる過程で、極自然に“やさしさ”が引き出されたのだと思います。

【5歳児、E君の異年齢児へのかかわりで変化した姿】
「交流の日」として、散歩に出掛ける前日、担任は子どもたちに「明日、なぎささんとお散歩行くよ」と伝えました。散歩当日の朝、「先生がいい」と、これまで5歳児と手を繋ぐことを頑なに拒否していたなぎさ組のg君に、E君は、「g君のかっこいい靴はどれかな~?」と職員顔負けの寄り添い方でさらっと誘い、靴を履かせて手を繋いでくれました。引率者たちはその様子を見て「すごい!」と魅了されました。5歳児のE君は3月生まれ。クラスではケンカをしても泣いてしまったり、あまり目立つ存在ではありません。E君にとって「交流の日」は、なぎさ組の子に頼られたり、先生たちに任されたりすることも多く、今も張り切っています。

この頃になると、かもめ組の中では「E君は、なぎさの子のお世話が一番上手だよね」「E君の周りにはいつもなぎささんいっぱいおるよな~」という声が聞かれるようになり、E君自身も「交流(の日)」によって自信をつけるたようです。みんなから「すごい!」と言われれば言われるほど、かかわり方や声のかけ方が巧みになっているように感じます。その頃来ていた実習生も「クラスでは怒ったり、泣いたりするE君なのに交流の日はいい顔ですね。話し方や誘い方が、私よりも上手で勉強になりました」と話してくれるほどでした。
同年齢での顔、異年齢での顔。大きく異なる自己を発揮するE君にとって、「交流の日」は格別の意味があると思います。3歳児から5歳児の幼児の異年齢とはまた違う関係性が生まれているように実感しています。2歳児も5歳児も、同年齢では味わえない心情、言動、表情を現わしてくれます。

また担任も同年齢クラスだけの担任をしていると、子どもの見方が偏ってしまうことに気づきます。
今年度、1年を通して交流する中で、自分のクラスの子どもたちの成長や心の変化を、2歳児の担任も5歳児の担任も互いに同じように感じ取って、視野も話題も広がったことも収穫でした。先進国では当たり前の「異年齢児保育」 も日本の中では、まだまだ、少数派です。どんな社会も職場も異年齢集団なのに「教育界」だけ同年齢に偏っています、ここが日本の教育の課題でもあります。【資料提供:福田侑真】

週刊メッセージ“ユナタン”28(なな)

2017年1月6日 金曜日

 ≪ユナタンデラックス:28≫ at ななこども園

1歳児(ももぐみ)からの贈り物

平成28年12月26日  理事長 片山喜章

今年、最後のユナタンは、1歳児もも組の「保育の実際」を記録したものを掲載しました

もも組担任 中野・中川・片野・山本(奈)

~ これまでの様子 ~

子ども達の関わり合いや繋がりが持てるように高月齢児、低月齢児、それぞれの性格や0歳時からの引き継ぎ等を考慮した上で、4月からグループ(3人)を組んで生活をしている(ぴんく部屋:1グループ3人×3グループ/しろ部屋:1グループ3人×3グループ)ねらいとしては、まずグループ内でのやり取りやモメ事等の経験を繰り返し、同じ年齢・月齢の子との関わりを持つこと。そこから少しずつグループ以外のお友達に興味・関心を持ち、最終的には1つのクラスとして2歳児クラスへと繋げていきたいと考えました。

グループでのやり取りを丁寧に関わり、見守ろうと思うと、子ども達が一番顔を合わすことが多いのが、おやつと給食の時間です。当初は、自分のマークのある席に着くと、同じグループの子が座っていなくても気にせず…ということが多かった。段々と自分のグループや同じグループのお友達のことを分かってきた頃、本来の自分を出せるようにもなってきていた。朝のおやつ前は「ママがいい!」、給食前は「トイレいくのイヤや!」、3時のおやつ前は「ねむたいねん!」と自己主張する子ども達。時には、甘えたり、イヤダ!という気持ちを受け止め、もちろん1対1で関わることも必要だと考えています。

・・・しかし、そんな時こそ、チャンス到来!揃っていないグループのテーブルに保育者がつき、その都度「ここ誰のお椅子?」「○○ちゃんどこにいてる?」「○○ちゃん来るかなぁ?」と、同じグループの友達を知らせ、気付けるように働きかけてきた。子ども達の会話や行動がどのような方向にいくのか、予想がつかず、頭を悩ませることも多いが、そのやり取りにじっくり時間をかけることを大事にしてきました。最近では、グループの友達が揃うと、子どもたちの方から「そ~ろった~!!」と知らせてくれるようにもなってきた。「そろったね~、“いただきます”しようか!」と声をかけると嬉しそうに笑い、「おいしいね~!」と言い合いっこするグループも。そんな姿から、次のステップとして、『お当番』(コップ配り)を始めていこうと思っています。“渡す”“もらう” 、「どうぞ」「ありがとう」のやり取りから、またひとつ友だちとの繋がりを持てるように、と期待を込めて・・・。『お当番』を始めるにあたって、これからどう進めていこうか?と担任で意見を出し合った。話し合いの末、ひとつ前の段階として『お手伝い』から始めてみることに。まずはおやつ&給食の際、コップをテーブルの中央に置き、子ども達の反応と行動を見てみようか?ということになった。すると、自分の分だけ取る子もいれば、横に座る子に「はい」と渡してあげる姿も見られた。また、担任から直接「○○ちゃん、コップ渡してくれる?」とお願いしてみたり、3人のうち1人の子の傍にそっとコップを置いてみたりと、色々なやり方で『お手伝い』をしたくなるようなの雰囲気づくりをつくっていきました。

 

~お手伝いスタート直後①~

(トマトグループ/A・B・Cは言葉がよ~く分かる3人で、おもしろい会話のやり取りがいつも聞こえてくる) コップをテーブルの中央に置く『お手伝い』に慣れてきたのか、席に座るとすぐ「○○が配る!」と主張するようになった。(やりたい気持ちが出てきたし、今までとは違う聞き方したらどうなるかな?…と思いながら)

保「今日は誰がお友達にコップ“どうぞ”する?」と聞いてみた。3人一斉に「Aが!」「Bちゃん!」「Cがする!」と口にする。やっぱり3人ともやりたいようだ。 保「じゃあ・・・“やってもいい?”って聞いてみる?」と一人ひとりの顔を見て言ってみると、3人それぞれ「やっていい?」とそれぞれの顔を覗くように相手の表情を確認する。が、3人とも「あか~ん」との首を振る。だれも一歩も譲る様子はない。「やってもいい?」「あかん」と、そのやり取りがくりかえされる。(うーん、まだ“譲る”のはむずかしいかなぁ。このままじゃ、給食食べられない…)思い切って、保「Aちゃんはだれに“ど~ぞ”したいの?」と聞いてみた。

A「Bちゃん」 保「Bちゃんはだれに“ど~ぞ”したい?」 B「Cちゃん」 保「Cちゃんは?」

C「Aちゃん」   (ってことは…? それぞれ好きな子に渡せる!)

保「じゃあ~そうする?」と一人ずつに1つコップを渡し、それぞれ“渡し”、“もらう”ことが出来た。コップが手に渡ると「もらった~」と喜び、笑顔になっていた。『お当番』とはまたちがうかも?とは思ったものの、まずは“やりたい!”気持ちを持って欲しかったので、これもアリか…と思いました。

 

~数日後②~

(トマトグループは特にやる気満々。他のグループではまだそこまでの意欲は見られない)

少しずつコップ配りが分かってきた頃、いつものように、保「今日は、だれがコップ配る?」と聞いた。

A「Aがくばる!」と声を荒げて主張する。 B「Bちゃんがしたい~」と小さな声でつぶやく。

C「Cがくばる~!」とテーブルに身を乗り出して言う。(今日もまた3人ともかぁ~…どうしようかな)

保「みんな配りたいの?どうしよう~」 A・Bは自分が配る!と一点張り。しかし珍しく、いつも同じく主張するCがその2人の様子をただ静かに見ていた。

保「Cちゃんは?」 C「いいよぉ~」すぐに“いいよ”と言ったので、本当に?と思いもう一度聞く。

保「いいの?AちゃんとBちゃん、コップど~ぞしてもいいの?」 C「うん!」と頷く。

(珍しい…じゃあ、AちゃんかBちゃんか…どっちか譲るかなぁ)

保「Cちゃんは、コップ配って“いいよ~”だって。よかったね~Aちゃん、Bちゃん、どうする?どっちがする?」と聞いたが、2人とも引くことなく、A「Aがする!」いつにも増して怒ったような口調で、声を張り上げる。B「Bちゃんするの!」と言う。何度訊いても同じ。2人とも頑なで、迷った末、聞き方を変えて聞いてみた。保「Aちゃんはだれに渡したいの?」 A「Bちゃん」 保「Bちゃんは、だれに渡したいの?」 B「Cちゃん」と答える。

いつものBなら、Aを指名することが多いが(普段はトマトグループでもBとAのペアでよく遊んでいる)このやり取りがあったせいか? BはCに渡したいと言った。 朝にも2人の間でちょっとしたモメ事がありました。(あれれ、Aちゃんにはだれが渡してくれるかな…)

保「じゃあ~、BちゃんはCちゃんに渡して、AちゃんはBちゃんに渡す?・・・Aちゃんには?」と聞いてみたが、3人とも「・・・。」“???”といった表情。(分かりにくいか・・・渡してみたら分かるかな?)

保「じゃあ、Aちゃん、Bちゃんに渡す?」とコップを渡す

Aは、Bに「はい」と渡した。

保「はい、じゃあBちゃんはCちゃんに?」とコップを渡すと、Bは言った通りCに渡す。そこで気付いたのか、困った顔のA・・・保「Aちゃんないね・・・どうしよう?・・だれがどうぞする?」

少し間が空いて C「Cするわ!」と初めは譲っていたCが手を挙げた。コップを渡され、Aの困った表情は和らぎ、給食を始めることができました。

 

~数日後③~

朝のおやつでのこと。Bは母と離れるのが嫌だったようで機嫌が悪く、保育者と1対1の関わりを求めていた。おやつもいらないと言うので、トマトグループはAとCの2人で食べることに。

保「今日は誰がコップ配る?」 A「A!」 C「C!」 保「AちゃんもCちゃんもしたいの?」 今日も長引くかな~と思いながら、トマトグループさんなら見通しを持てるかな?と思い、給食のときにもコップ配りができることを提示してみる。保「給食のときもコップ配れるよ。Aちゃんは今がいいの?」

A「いまがいい・・・」と少しいじけたように呟く。 保「Cちゃんは?今配る?給食のとき配る?」

C「Aちゃんいいよ~C、きゅうしょくのときくばるわ!な!」本当に良いのかな?と思い、もう一度2人に確認しました。保「Cちゃんはいつ配るの?」 C「きゅうしょく!」 保「今は誰が配るの?」 A「A!!Cちゃんは、きゅうしょくのとき くばるねん!」  2人とも晴ればれとした表情で、お互い納得したようだったので、朝のおやつのコップ配りはAがすることになりました。

そして、給食の時間です。 A「Aがコップくばる!Aがコップくばる!」と主張し始めるA。

(あれれ・・・朝のおやつでの約束は忘れちゃったのかな?)

トマトグループの3人が揃い、「そ~ろった~!!」と知らせてくれたので、保育者がトマトグループに行き、誰がコップを配るか聞いてみた。保「今日は誰がコップ配るの?」 A「A!!」 C「Cしたい!」 Bは黙って聞いている。(朝のおやつ時にいなかったBの存在が気になるけど約束したし・・・)保「朝のおやつは誰が配ったんやった?」 A「A!」 保「Aちゃんやね。でも、Cちゃんもやりたかったから、給食のときは誰が配るって言ってたんやった?」 A「Cちゃん!」

いじけたような表情をするかと思いきや、意外にもAの表情は明るい。

保「ほんまやね、Cちゃんがするって言ってたね」 (Bは何も言わないけど・・・どうかな?)

保「Bちゃんにも聞いてみる?」 C「うん。Bちゃん、コップくばってもいい?」

保「朝のおやつのとき、給食はCちゃんがするってお話しててんけど、Cちゃんが配ってもいい?」と朝のおやつ時の経緯を説明する。

B「うん」と、いまいち上の空なのか、はたまた朝のおやつ時は自分が参加していなかった(でも、そのやりとりは見ていた)ことで、今は自分がやりたいと言ってはいけない感じだと空気を読んだのか、あまりにもあっさりとOKしたBでした。給食は朝のおやつ時の約束通り、Cが配ることになりました。

 

・・・数日後・・・④

その日はBが休みで、トマトグループはAとCの2人だった。朝のおやつ時、今日はどんなおやつだろう?とおやつを覗きにきたAとC。すると A「なぁなぁ、Cちゃんコップくばっていいよ!A、きゅうしょくのときくばるから!」そう言ってとても楽しそうに2人で席についた。“また次がある”ということが分かり見通しを持ってやりとりすることが1歳児で出来るんだな~と保育者も感心してしまった。

 

・・・そして次の日⑤・・・

午後のおやつ。担任の一人がトマトグループでコップ配りはだれがするのか?の話をし終えたばかりの時。A「Cちゃんくばっていいよ~」(あら、またAちゃん譲ったんだぁ~1歳で自分から“譲る”って・・・Aちゃんすごいなぁ)と思った時、AはCの目を見て、A 「うれしい~?Cちゃん、うれしい~?」と聞く。(へぇ~、Cちゃんの気持ちそこで聞くんだ~)。Cは、どういう意味で聞かれているのか“???”と、あまり分かっていないような反応だったが、ただ小さく頷き、コップを取りに向かった。C「はい」とコップを渡すCに対し、Aは自然と A「ありがと」と言いました。

 

・・・『お手伝い』(お当番)を通して・・・

『お手伝い』を進めると同時に、子ども達の言葉のやり取り、気持ちの変化を追ってきた。初めは、『お当番』を通して、 “やりたい!”気持ちを引き出したり、友達と気持ちをぶつけ合いながら、グループの全員が当番を経験して欲しいという思いだった。“やりたい”気持ちがみんなに出てきて、興味を持ち始めた所で『お当番表』を作ろうかと、話し合っていました。(めくって、順番を知らせ、目で理解出来るもの)

そして、担任間では日々、その日の『お手伝い』の振り返りと、それぞれのグループの状況を伝え合うようにしてきた。もちろん、『お手伝い』のペースや意欲の差はグループそれぞれにあり、全グループがトマトグループのように常にヤル気に満ち溢れているわけではない。ただ、毎度のごとく担任はトマトグループに手こずりつつも、子ども達の気持ちに寄り添い、話をしてきた。その中で、気付いたことがある。いつもは“自分!自分!”と全面に自我を出すAのような子の中に、“自分が譲ることで友達が喜ぶ”といった思いやりの気持ちがいつの間にか芽生えていた、ということ。そして“友達が喜ぶ姿は、またさらに本人にとっての喜び”へとなっているということ。でも、もしかしたら『お当番表』がないからこそ自然と芽生えた相手を思いやる気持ちなのかもしれない。一方で実は、この年齢の子でも、相手を喜ばせたい気持ちや思いやる気持ちをしっかり持っているのでは・・・?とも感じた。

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という子どもたちの物語とそこに向き合う保育者集団の姿です。これ、1歳児です。

この頃から物事には相手があって、互いに異なる思いをもっていることを確かめる体験していく、このような保育を通して、問題解決は話し合う事であることを学び、話し合うための表現力を高める必要性を個々の子どもが自分自身感じ取る、これが、ななこども園の中心に据えられた保育の目標です。

週刊メッセージ“ユナタン”28(なかはら)

2017年1月6日 金曜日

≪ユナタン:28≫ at なかはらこども園

~ 太郎は名指揮者 ~

平成28年12月27日 理事長 片山喜章

ご承知のように、「フリーデー」と称するコーナー・ゾーン型の保育(行事の時期をのぞいて水曜日に開催)での太郎(仮名)の姿です。太郎は3歳児ばんび組で兄が2人いる末っ子です。とても活発ですが、少々、甘えん坊な面もあります。そんな太郎にとって「フリーデー」は今では大きな楽しみの1つになっています。けれども「フリーデー」を始めた頃は、自分の遊び場所をなかなか選べずに、うろうろする姿が毎回のように見られました。

「フリーデー」といっても、「遊び場ボード」に自分が選んだコーナーの名前が書かれたスペースにマグネットになった自分の写真を貼ります。自分の居場所がみんなにわかるようにし、また、そのコーナーに誰がいるか、子どもたちどうしで分かり合える仕組みです。遊戯室に設けた「積み木コーナー」の遊びをやめて「科学のコーナー」に移動したくなったなら、この「遊び場ボード」に立ち寄って、マグネットになった自分の写真を「科学コーナー」のスペースに移し替える作業が必要です。それが基本のルールです。太郎はその作業をしないままいろいろなコーナーを転々と歩きまわることが続きましたが、運動会が終わった頃から、ようやく好きな場所を選んでその場で遊ぶようになりました。写真を移動させるルールも理解できるようになりました。

12月9日(金)のことです。この日は法人全体で取り組んでいる保育環境評価を受けるので、「フリーデー」になりました。法人以外の先生方も評価者としてたくさん来られました。
その朝、太郎は泣きながら登園しました。母と離れる際、大泣きし担任に抱っこされたままでした。私(片山)はそんな太郎に近寄って巧みに泣きまねをしました。これは私の秘策です。
いろんな園に行って、泣いている2~3歳の子どもの前では、(知らないお爺さんですから)慰めるのではなくて、巧みに泣き姿を見せて、その子の顔を覗き込んでは顔を背けて、見ないで!って素振りを演じます。80%以上の成功率で泣き止みます。「なんじゃ、このジーさん、なんで泣いているんだ?」と不思議な世界に引きずり込むことで、泣き止んでしまうのです。

太郎は泣き止んで、しばらく、担任とままごとコーナーで遊んでいました。私も評価者の1人ですから「絵本コーナー」から「積み木コーナー」まで巡回しました。評価者たちが一様に驚いたのは、どの子もどの子も充実して遊び込めている姿です。「積み木コーナー」では約2時間、ずっと、ロケット公園の写真を見ながら積み木で再現したり、色付きの紙を積み木で囲んで大きな池を作ったり、単純な積み木遊びを越えたイメージの世界が広がっていました。
11時頃、5歳児ぞう組の部屋の方から、ピアノと楽器の音が聞こえてきます。時間限定で、いろんな曲をいろんな楽器でリズム打ちができる「楽器コーナー」がオープンしたのです。
無口なY田先生(推測に任せます)が、ピアノの腕前を発揮しています。ここでもルールがあるようで、1曲終わるたびに、楽器を交換したり、順番待ちしていた子どもと代わったりします。みんなルールをしっかり守っています(こういう姿もコーナー・ゾーンの特徴)。私は他のコーナーを巡って、再び「楽器コーナー」を覗いてみると、そこには、あの太郎の姿がありました。

太郎は、きれいに並べられた楽器を見て、目を輝かせて太鼓に興味を持ちました。
人気の太鼓は順番待ちが必要です。しばらく自分の順番が来るのを待っていた太郎は待ちきれず、順番をぬかそうとします。すると、5歳児ぞう組の子が厳しい表情で一言。
「ぬかしたらあかんで、じゅんばんやで」 太郎はその子の怖い顔つきをまじまじと見つめ、そして、すぐに列の後ろに戻り、自分の順番をしっかり待つことができました。もしも、先生が諭していたなら、駄々をこね、ふくれっ面をしていたかもしれません。順番を守った太郎は、打って変わって誇らしげに太鼓を叩きました。そして“お約束”を守って、次の子に代わりました。

次に、ウッドブロックの列に並んだ太郎は、これから演奏しようとする5歳児の2人の女児のところへ行きました。「こうやで!」と左右2ヶ所を交互に叩くのだ、とウッドブロックの叩き方をかなりシツコク伝えました。1人は「太郎君、知ってるし!」とムッとする気持ちを吐き出し、もう1人は「ありがとう、太郎君」と返しました。
どちらも太郎にとっては貴重な経験です。
その後、楽器を囲んだ中心に指揮者がいることを発見した太郎は、すぐに指揮者の列に並びました。速くやりたい気持ちを抑えきれない様子でしたが、前の2人が終わるのをじっと待つことができました。自分の番がくると太郎は髪を振りみだし、全身を使って指揮棒を振ります。
まさに指揮者気取りです。1曲が終わると“お約束”を受け入れ、その時、太郎は華麗な指揮さばきをして、すっきりした気分ですぐに次の友達にバトンタッチしました。“楽しいから自己抑制できる”“ルールがあるから自己抑制できる”“先生ではなく年上の仲間から言われるから自己抑制できる”。あらためて「フリーデー」が太郎の成長を支えていると感じました。

そして、振り返りの時間。クラスのサークルタイムでは、じっと座っていることが難しい時がある太郎が、この日、Y田先生のそばで自主的にお手伝いをしました。Y田先生が、それぞれの楽器について話をしていると、先生が言った楽器をすぐに取りに行き「はい、これ!」とさっと手渡します。サークルタイムの中心的存在になった太郎は、この日「楽器コーナー」の中で、揺れ動く様々な自分の感情を見事にコントロールできた喜びであふれていたでしょう。きっと数々の楽器を束ね終えたオーケストラの指揮者のように。【資料提供:横田英一】